[2019/12/15] 日経新聞「企業が選ぶ弁護士ランキング」2019年の総括

「企業が選ぶ弁護士ランキング」選出ありがとうございます!

今年も年末恒例行事、日経新聞さん「企業が選ぶ弁護士ランキング」が発表されました。クライアント企業の皆様、アライアンス・協業頂いております企業の皆様、今年も選出頂きまして誠にありがとうございます。年によって、専門カテゴリが異なりますが、今年は、企業法務・データ保護・労働法の3つのカテゴリーでした。個人情報保護法・データ保護は、2015年、2016年、少し間が空いて今年2019年で3回目です。企業法務領域のなかでも関心が高まってることが分かります。2018年から2019年はデータ保護領域において極めて重要な年でした。GDPRの施行後、データ保護法制の波は、中国サイバーセキュリティ法、カリフォルニア消費者情報保護法、タイ個人情報保護法、インド個人情報保護法、ブラジル個人情報保護法など世界各地に広がっています。グローバルでビジネスを展開する日本企業も対応が求められます。

国内データ規制動向

また、国内に目を転じてもデータ活用領域が大きなマーケットに成長しています。これは、大井が必ず講義で話していますが、特にデジタル・マーケティングの領域が重要です。広告代理店、ネット・メディア、SIベンダ、データベース、Saasベンダなど様々な異業種がDMP事業に一気に新規参入し、まさしくレッドオーシャン化しています。ただ、それ以上にマーケットが拡大しており、トレジャーデータのソフトバンク子会社ARMによる買収や、フロムスクラッチのKKRとゴールドマンサックスからの100億円規模の資金調達など大型の投資案件も生まれており投資活動も活発です。このデジタルの領域に専門特化し、日本のデジタル・マーケティング産業の下支えとなる事業を行うことが急務であり、12月3日に創業させて頂いた「TMIプライバシー&セキュリティコンサルティング」がその受け皿となります。この会社は、自分で言うのもおこがましいのですが、必ずやデジタル・マーケティング領域の核となるキープレイヤーになると思っています。そして、この創業当日にトレージャーデータさんとソフトバンク・博報堂・ARMのJVであるインキュデータさんとのアライアンスを発表させて頂きました。生後0日の「ど」ベンチャー企業を評価して頂きましたので、しっかりとビジネスとしての結果を出して期待にお応えしたいと決意を新たにしております。

データ活用のユーザ企業に対する支援

そして、このようなデータ活用サービスを提供するベンダ企業側を支援することと同時に、これらのサービスを利用するユーザ企業を支援することも重要なタスクとなります。2019年は、リクナビの事件のようにデータ活用領域における大きな不祥事が発生しました。まずは、ベンダ企業側のサービス「適法」かつ「安全な」に構築することが重要な責務ですが、同時にユーザ企業もデータ活用サービスの導入するにあたりそのサービスを慎重に吟味することが求められます。リクナビの事件では、利用企業に厚労省から指導が入りました。個人データを利用しているのは、あくまでユーザ企業であり、情報主体から、個人情報の不正利用を受けた、プライバシー侵害を受けたとクレームを受けるのは、ユーザ企業であり、情報主体に対する対外的な責任はユーザ企業にあるからです。この責任関係をしっかり理解し、ユーザ企業が「適法」かつ「安全」にデータを利活用するための支援サービスを展開していきたいと思います。

2020年のデータ保護規制の展望

2019年は、個人情報の分野では、国内外ともに激動の年でしたが、2020年もそれが続くことが見込まれます。ちょうど2日前に「個⼈情報保護法 いわゆる3年ごと見直し 制度改正大綱」の公表されました。残念ながらこの個人情報保護法の改正のスピード感は、データ利活用の産業の進化スピードや安全性確保のためのサービスの進化からワンテンポ遅れていますが、企業が遵守すべく最低ラインの基準が新たに示されます。もっとも、データを大量に取り扱う企業は、法律のみならず、サービスの安全性や健全性が求められます。それだけに、法律が未整備なところで、「安全」なサービスを構築することの重要性が高まっています。企業の独り善がりでなく、ユーザが何を考えているか、何に不安感を抱くのか、精確にデータ利活用のリスクを認識することが重要です。企業としては、個人情報保護法の改正動向をキャッチアップするとともに、より安全にサービスを提供する、利用するために何が必要かを法改正の趣旨に遡って理解し、企業自身のより高いスタンダードを構築することが必須となる年になると思っています。

TMI内部向け業務連絡

来る2020年も、新しいサービス・新しいルールや法制を追いかけ、そしてリードする極めて忙しい年になることが予想されます。幸か不幸か(笑)、この領域に一歩足を踏み入れた以上、TMI総合法律事務所のデータチーム、TMIプライバシー&セキュリティコンサルティングのメンバは常に未知の新しい案件に取り組まなければならない宿命を背負ってしまいました。過去の経験を切り売りして安定稼働できる現場ではありません。自分達が常にストレッチした状態で爆速で進化し続けないと、進化し続ける企業の方々のスピードに耐えられず振り落とされてしまいます。是非、好奇心を持って貪欲に新しいビジネスを吸収していって欲しいと思います。

クライアント企業の皆様・アライアンス協業企業の皆様向け業務連絡

2019年、様々なエキサイティングな案件をご一緒させて頂きまして誠にありがとうございました。2020年も企業の皆様に価値を提供できるよう努めて行きたいと思います。そして、自分達のサービスに気が付いた点がございましたら、是非、良い点も改善すべき点も併せてフィードバックを頂れば大変有難く思います。また、新会社であるTMIプライバシー&セキュリティコンサルティングは絶賛メンバを募集しております。データ活用とデータセキュリティ領域に一生を捧げたい、という方がいらっしゃいましたら、エンジニア、コンサル、デジタルマーケター、弁護士、非弁護士問わずお声掛け頂ければ幸甚です。

(TMIプライバシー&セキュリティコンサルティング)

https://tmiconsulting.co.jp/

(日経新聞2019年12月15日)

■データ関連、首位は影島氏「独禁法のガイドラインにも注意が必要」

データ関連分野では、国内外のデータ保護法制が厳しくなり、企業が弁護士に相談する案件が急増している。1位の影島広泰弁護士は「個人情報保護法については裁判例が少なく、どこまで対応すべきなのか悩む企業も多い」と話す。プライバシー対応について、事業のアイデア段階から法的な助言をする場面が増えたという。2020年に注目するのは個人情報保護法の改正だ。就活生の内定辞退率を販売していた「リクナビ問題」を踏まえ、「日本も(ウェブ閲覧記録などの)クッキーの取り扱いに関して明確なルールを設定することが求められている。条文が大きく変わらないとしても、企業実務に与える影響は大きいだろう」と話す。データ法務では「独占禁止法のガイドラインにも注意が必要」といい、個別の法律の枠組みを超え、より広い視野からのアドバイスに注力していく。2位の石川智也氏も海外データ保護法制を中心に多くの企業に助言した。欧州留学などの経験を生かし、海外専門家との交流を欠かさず、文書だけでは分からない「リスクの肌感覚」を研ぎ澄ます。例えば、グローバルで一括に対応すべきか、個別地域ごとに対応すべきか、企業によって最適な対応は異なる。「リスクを言い立てすぎず、現実的な方策を提案する」という姿勢が評価されているようだ。3位は大井哲也氏だった。TMI総合法律事務所の所内ベンチャー事業第1号として、このほど設立したTMIプライバシー&セキュリティコンサルティング(東京・港)の社長に就任した。大手事務所の弁護士として助言するだけではなく、データを利活用したい企業のビジネスに直接関わるという新しい道に踏み出す。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53170260Q9A211C1000000/